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Three chords and a cloud of dust ...

The New York Dolls ~latter part


これは映画が撮影された時点で思いもよらない人生を送っていたArthur”Killer”Kaneのドキュメンタリー。
バンド脱退後のArthurの人生、そして音楽と無縁の生活を送る彼に突如降ってわいた一夜限りのDolls再結成話。

1974年のJohnny ThundersとJerry Noran脱退後も残り3人でしばらく活動していたが、ArthurはDavid Johansenと大喧嘩して脱退。
DavidはジャンキーだったJohnny達を引き止めなかったのと同様にアルコール中毒のArthurも引き止めなかったらしい。
75年、ここにNew York Dollsは解散する。
その後Arthurは音楽活動を続けるがうまくいかず生活は困窮する。
仕事はなく酒浸り、暴力もふるう夫に愛想を尽かし妻は出て行く。
ヤケになったのかArthurは自宅の2階から飛び降り怪我をして入院。
これが転機となる。

退屈な入院生活の中、ベッドで読んでいた新聞にモルモン教の広告があった。
電話連絡後、幾度かの宣教師の訪問を受け入信。
後に教会の図書館に勤務するようになった。
戒律の厳しいモルモン教によりArthurの堕落した生活は一遍。もちろん酒もタバコもやめた。
バスで職場に通い、仕事をして、またバスで自宅に帰る、平凡で変わり映えのしない毎日。
髪は額が上がり、地味なネクタイを締めた物静かな50代のおじさんだ。
その姿からはかつてのロックスターの面影を見出すことは難しい。
しかし彼は今でもDolls時代の輝かしい日々を忘れられずにいる。
決して成功したわけでもなく金銭的にも苦しいはずだったDolls時代だが、彼にとっては「人生最高の思い出」なのである。

彼は今でも貧しく、質に入れたベースを買い戻せないでいる。
質流れを防ぐため毎年利子分を支払うのが精一杯なのだ。
かつての仲間であるDavidとSylvian Sylvianが今でも音楽活動を続けていることを羨ましく思いコンプレックスさえ感じている。
特に喧嘩別れし、メンバーの中では唯一の成功者といえるDavidに憎しみさえ抱いていた。
そしてDollsのフォロワーのバンドたちが成功して稼いでいることに怒りを覚えていた。

Dollsというバンドは今でこそ世界的に知名度のあるバンドになり、その音楽性も先進的なパフォーマンスもリスペクトされているが、当時はローカルな人気に止まりレコードは売れなかった。
そもそも彼らが最初に注目されレコード会社との契約がまさに結ばれようという時に初代のドラマーがドラッグ絡みで突然亡くなったことから彼らには悪名がついてまわるようになった。
さらに彼らは世間知らずだったのだろう。
契約時にすべての権利を手放してしまったのだと思うのだが、現在も彼らにはまったく印税は入って来ないのである。

この映画の監督もモルモン教徒で教会でArthurと知り合い、彼の人柄に興味を持ち彼を映画にしたらおもしろいのではないかと考えていたところ、偶然にもDolls再結成話が持ち上がったらしい。
そこで映画制作も現実味を帯びてくる。
彼はArthurに密着しカメラを回す。
Arthurの心は再結成に対する戸惑い、喜び、期待、不安など様々な感情で揺れ動く。
物語はあっという間に進んでいき、公演一週間前のリハーサルに突入。
ここでArthurは30年ぶりにDavidと再開する。
Davidとの関係というのがこの映画のひとつのキーポイントになっているように思う。
Arthurの不安の大もとはここにあったと言っていいのだから。

物語の結末は今ではもう有名だと思うが、あえてここでは書かない。
ロックスターを夢見て挫折した人間はこの世にたくさん存在することだろう。
‘一発屋’と呼ばれ一度はチャンスを手にしながら、その後消えて行ったバンドもたくさんある。
だが、こんな‘運命’と言っていいような人生に出会う人がどれだけいるだろうか。
エンドロールを見ながら、感動というよりは不思議の感に打たれ頭がしびれたようになった。



Dolls祭りの最後が「ALL DOLLED UP」。
これもドキュメンタリー。
前出の写真集のカメラマン・Bob Gruenが3年にわたって撮影したプライベート映像を編集したものである。
当時は最新式だったハンディタイプのビデオカメラで撮られているがオール白黒。
だが、貴重なライブ映像に加え、バックステージの様子、移動中の様子などを見ることが出来、メンバーの飾らない生の声を聞くこともできる。
「New York Doll」を見た時Arthurの声や話し方が年寄り臭いと思ったが、これを見てArthurは若い時からあんな声であんな話し方だったのだと知りおかしかった。

アルバムは夢中になれなかった私でもライブの映像にはわくわくした。
ライブの方が断然いい。
このDVDを見終わった頃には幾度となく流れた何曲かは抵抗を感じなくなり、頭の中に自然にすうっと流れるようになった。
ショウマンに徹しているDavidはすごい。
これではドラッグにおぼれロックのためにドラッグをやってるんだかドラッグのためにロックしてるんだかわからなくなってしまったメンバーとはうまくいかなくなるわけだ。

Handsome Dick ManitobaのBob Gruenへのインタビューも愛があっていい。


  1. 2010/08/28(土) 23:49:59|
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Author:正親町さるる
IGGY POPや1960~70年代のアメリカ・ミシガン州のROCKが大好きです。
USガレージ・パンク、ガレージ・サイケにもハマってます。
ミュージシャンやROCKをテーマにした切り絵も描いてます。

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